テーブル軸線の傾きによる反転加工への影響
テーブル軸線の傾き
旋回軸を備えた工作機械の精度を担保するには、旋回軸のずれや傾きを小さくすることが重要になります。図のような横型マシニングセンタの例では、テーブル軸線(B軸軸線)とY軸の平行からのズレ量をテーブル軸線の傾きと呼びます。理想的にはテーブル軸線はY軸と平行ですが、実際にはX軸周り・Z軸周りの傾きが存在し、わずかに傾いた状態でテーブルが旋回しています。この傾き量が大きいとワーク精度に影響を及ぼす可能性があります。
テーブル軸線の傾きの影響
実際の加工例において、テーブル軸線の傾きがどのような影響をもたらすのか見てみましょう。以下で、実際の加工例を2件ご紹介します。図2-(1)に示すようなX軸周りにテーブル軸線が傾いた例では、イケールB軸を0,180と旋回させて面を削ると、軸線の傾き分先細りの形状になってしまいます。その結果、ワークの平行度へ影響を与えることが分かります。
高い機械精度が要求される加工の一つに反転ボーリング加工があります。横形マシニングセンタでテーブルを旋回させ、表裏の両面から穴をあける加工方法ですが、この加工方法はテーブル軸線の傾きの影響を大きく受けます。図2-(2)のように、軸線の傾き分だけ穴が傾いて加工されます。180度反転させて逆側からも同様に穴加工を行うため、穴は折れたような形状になります。穴精度については、特に円筒度が要求される場合に、位置決め精度、主軸の軸線とZ軸の平行度、テーブル軸線とY軸の平行度が高いレベルで求められることになります。
テーブル軸線の測定方法
このように、加工へ与える影響が大きいテーブル軸線の傾きですが、どのように測定すればよいかご存知でしょうか?当社保有の測定機、レーザーバー、レーザートレーサーといった測定器によって回転軸の精度を正確に測定することができますが、軸線の傾きの測定のみに限定すると、ピックとブロックゲージを用いて簡易的に軸線の傾きを測定することが可能です。
図3のように、B0の状態でパレット上面にブロックゲージを置き、ピックで高さを読みます。ただしこの図では軸線の傾きが0の理想的な場合を考えます。この場合、ピックの読み値にはパレット上面精度が表れ、6um/mの傾きがあることが分かります。ブロックゲージに触れずにB180へ反転し、ピックの高さを読んで同じ値であれば、軸線の傾きがなく、パレット上面に6um/mの傾きがあることがイメージできると思います。
実際にはB軸線の傾きが存在します。傾きを\(A0B\)とした図4のような例を考えてみましょう。
B0、B180それぞれについて⓵式、⓶式をパレット上面の傾きをキャンセルするように連立すると、\(A0B\)を計算できます。(厳密には\(E_{AB}\),\(E_{ZB}\)といった誤差が加わるため、この方法は簡易的な測定法になります。) \begin{eqnarray*} 0 - \;(-6) &=& - \mbox{パレット精度} +A0B \times 1 &\cdots \mbox{①} &\\ + )\; 0 - (-18) &=& \; \: \: \mbox{パレット精度} +A0B \times 1 &\cdots \mbox{②} &\\ \hline 24 &=& 2A0B\\ \\ A0B &=& 12 \mbox{μm/m} \end{eqnarray*}
より高精度に補正したい場合
テーブル旋回時の誤差要因の代表的な例として、テーブル軸線の傾きの測定方法を紹介しました。現実の機械では回転中心の径方向誤差(芯ずれ)\(E_{XB}\),\(E_{YB}\),\(E_{ZB}\)や、傾斜方向誤差(姿勢誤差) \(E_{AB}\),\(E_{CB}\),角度位置決め誤差\(E_{BB}\)、軸線の傾き\(E_{A0B}\)、\(E_{C0B}\)が存在します。弊社では、レーザーバーなどの測定器を用いたより正確な測定と補正が可能です。精度に関する課題をお持ちでしたら、お気軽にご相談ください。